Under the table

金環日食というのがあった。
朝起きたら、夫が今日だと言った。すいれんも一緒に3人とも起きていた。その時朝の5時だった。7時半頃から見られるというので、みんなで起きて待っていようということになった。

気が付いたら、また、3人ともいっしょに起きていた。「何時?」と言ったら8時半だった。「もう終わったみたい」と夫が言った。

私は悪夢を見ていた。それは夫に殴られて離婚するという内容だった。夫は夫で、私の親戚の前で見栄を張って自己嫌悪に陥るという夢を見ていた。ふたりとも同時にお互いのことで悪夢を見ていた。その日一日、なんだか人生に疲れたような気分で過ごした。私と夫の相性を占ったら、「七冲」という犯罪を引き起こすほどの最悪な相性だということがわかった。一日、どんより、呪いたくなるような晴れない気持ちですいれんといっしょに外にも出なかった。夫が帰ってきて、夕飯の材料を買いにみんなでスーパーマーケットに出かけた時もずっと下を向いて歩いた。

これは金環日食のせいで、一番自分にとっていやだと感じる夢を見せられた気がする。

すいれんが生まれる前は、夫が子供を抱っこしたり、いっしょにいるところを見たらそれこそ私にとって宝物が一度に揃ったようなものなので幸せすぎて卒倒してしまうだろうと信じていた。でも実際には全然違った。はじめて夫がすいれんを抱っこした時、それは分娩室だったので赤ちゃんを産んだ幸せと安堵が勝っていた。要約赤ちゃんがいる事態に慣れたころ、夫が抱っこしていると落っことさないかという不安の方が大きかった。そして、そんな不安も晴れた今、ふたりが遊んだりしているのを見ると嬉しいというか楽だななんて思って笑っているけど、はじめ想像していたときめきはない。どうしてだろう、と思うけど、肝が据わったのかもしれない。

あめふりくまのこ(替え歌)

おやまに あめが ふりました
あとから あとから ふってきて
ちょろちょろ おがわが できました

いたずら すいちゃん かけてきて
そうっと のぞいて みてました
さかなが いるかと みてました

なんにも いないと すいちゃんは
おみずを ひとくち のみました
おててで すくって のみました

それでも どこかに いるようで
もいちど のぞいて みてました
さかなを まちまち みてました

なかなか やまない あめでした
かさでも かぶって いましょうと
あたまに はっぱを のせました

2011.9.16

花子の部屋の窓下に、小さなかたまりがある。犬は来るなり匂いを嗅いだが、くわえもしないでほかへいってしまった。荷物を運びながら、よく見ると、鳥の仔が仰向けになって足を時々動かしているのである。

こんにちは、赤ちゃん!!

赤ちゃんはここがイタリアかもアメリカかも、台湾かもわからないで、ただ、ここが世界で一番幸せで安全な場所だと知って生まれてくる。それはパパとママがいるから。

パパとママは赤ちゃんにとって、自分たちがそうだったように、すべてのもの、おむつやベッドやおもちゃや絵本や、その他目に見えないものもすべて愛で満たして、不安なんか知らない、世界で一番幸せな場所を用意して、待ってる。

笑うために口がある、輝きを知るために目がある、この世のすべての囁きを聴くために耳がある。この世界には朝もあるし夜もある、自然もあるし都会もある、いまは知らない人たちと友達になるね、人間だけじゃなく虫や鳥や馬や犬や、さまざまな色と形の個性的な優しい生き物がいるよ。あなたの前に広がる世界はとても美しい世界だよ。

2011.8.17

ユリさんは笑った。

「好きな人がいつまでも、死なないで、いつまでも教が続いてほしいって、そう思ったのよ。」

その祈りは永遠に人間が持つはかないものなの、そしてきっとはるかうえのほうから見たらネックレスみたいにきらきらと輝いていて、神さえもうらやませひきつけるほどの美しい光の粒なのよ、とユリさんは笑った。

(よしもとばなな,『アルゼンチンババア』より)

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・・・抱きしめられたこと、かわいがられたこと。それからいろいろな天気の日のいろいろな良い思い出を持っていること。おいしいものを食べさせてもらったこと、思いついたことを話して喜ばれたこと、疑うことなくだれかの子供でいたこと、あたたかいふとんにくるまって寝たこと、自分はいてもいいんだと心底思いながらこの世に存在したこと。・・・

(よしもとばなな,『彼女について』より)